第4回 IT経営戦略セミナー報告

菅野印刷興業株式会社 主催


誰も教えない、勝ち続けるためのIT経営戦略セミナー


平成21年11月6日(金) 13:30~16:00
魚津地域職業訓練センター 3階 会議室2
講師:原田光治氏(株式会社インターロジック代表取締役)


11月6日(金)、富山県魚津市の魚津地域職業訓練センターにおいて、菅野印刷興業株式会社主催「誰も教えない、勝ち続けるためのIT経営戦略セミナー」を開催しました。
セミナーの内容を簡単ですが以下にまとめましたので、ご参考にしていただければ幸いです。





1.2009年の注目すべきトピックス
――― インターネットでビジネスの可能性が広がる。

皆さん、ご無沙汰しております。黒部はこれで4回目、年内ではこれが最後ということで、4回もお付き合いいただいてありがとうございます。今日は、これまでお話したことの総まとめをしたいと思います。基本は、インターネットを使って、どう商売を広げていくか、ということです。
お話の前に、話題をいくつか皆さんにお伝えしたいと思います。最初にこちらにお邪魔してから、インターネットの世界では様々な動きがありました。

仙台では、「三井アウトレットパーク仙台港」で、先進的な試みが行われました。ショッピングそのものの形態を変えるのではないか、と言われています。店舗とiPhoneを結んで、会員登録をすると、随時、仕入れた商品や価格の変更を知らせてもらえる。その都度、わざわざお店に行かなくても、情報を得ることができます。
通常であれば、TVコマーシャルやチラシなどで、お客様を集めるのですが、タイムラグ(時間差)がありました。アウトレットでは、新しく入荷したお買い得品を、いかに早くお客様に伝えるか、ということが非常に大きなポイントでしたが、これまではチラシより早く知らせることができなかった。
この取り組みでは、1週間に1回チラシを打つ、というのでなく、半日単位ぐらいで情報が更新されていくわけです。小売業界では、入荷して、告知をして、それに興味を持ってもらうということが、今まではだいたい1週間でしたが、いよいよデイリーマーケティング、1日単位で商売をする、ということが始まっています。
面白い、というか画期的なのは、お店に商品が入ると、iPhoneで予約ができて、服などを、お店に取り置きしておいてもらえる。時間までにお店に行かなかったら、自然にキャンセルになる。そのような新しい購入の仕方です。事前にリサーチして、予約して、買う。リアルタイムでこのようなことができるということで、注目を集めています。
スマートフォンと実際の店舗をつなぐ、これは、これから皆さんのビジネスに関係してきます。このようなところに出店する、ということもありますが、飲食店などでも同じようなことをやり始めると思います。「今日の食材」など、デイリーで物事を伝えるということがスタンダードになってきます。
商売のスピードが、これまで1週間単位だったものが、1日単位になってきた。これは仙台で始まりましたが、これから各地で見られるようになるかもしれません。



次に、インターネット通販の市場が、どれだけ大きくなったか。
最初のセミナーのときに、2010年ぐらいに、インターネット通販が百貨店の売上を抜く可能性がある、と言っていましたが、2009年で既に抜いてしまいました。2010年の予測として、2.5兆円が見込まれています。これだけ不況だ、と言っているなかで、インターネット通販の市場だけが伸びている。2ケタどころか、150%という伸びがあるジャンルもあります。もし今、商売が厳しいなぁ、物が売れないなぁ、という方がいらっしゃったら、答えはひとつです。伸びているところを取っていくしかない。これが結論です。

滋賀のクリーニング屋さんが始めた「せんたく便」(ヨシハラクリーニング)。インターネットで登録すると、大きさによってボックスが届けられて、そのボックスに入れて送ると、きれいにしてまた送られてくる。全国から注文があります。どうしてこんなことができるかというと、流通コストが安くなっているからです。
インターネットは情報革命と言われていますが、もうひとつ、大きな革命があります。インターネットが流通・物流の世界を大きく変えているのです。インターネットが普及したことによって、「物を送る」ということが多くなってきて、運送業者は安くサービスを提供できるようになりました。空荷が一番問題なわけですから、多ければ運送コストを抑えることができます。運送関係の料金は10年で4分の1くらいになっているそうです。このように、インターネットと相性が良いので、商売が成り立っているのです。

金融機関でも、証券関係でも、インターネットを使った取引が圧倒的に増えています。ディスカウンターの勝ち組はもちろんいますが、我々のような中小企業は、価格では勝てる状況にありません。方法として、インターネットを使わざるを得ない、ということがあると思います。

アマゾンが出した電子ブックリーダー「キンドル」。アメリカでは、これから5年の間に、20%の書籍がなくなると言われ、これも新たな情報革命です。一番安いものでも文庫本500冊ぐらいが入ります。こういうものを持っている人に対しては、新しい告知の仕方を想定していかなくてはいけない、ということで、私たちも研究しています。通常のパソコンや携帯と違うので、読ませるものについてはこちらの方が便利です。スマートフォンとも違います。
アメリカでは、本をダウンロードして、読むのではなく「聞く」。いわゆるオーディオブックというやり方になってきています。皆さんの会社でもこれに対してコンテンツの配信ができるように、これから考えていかなくてはいけません。

先程のアウトレットモールや、クリーニング屋さんのような物流、「キンドル」のようなツールなど、全部を想定して商売を考えていかなくてはならないので、結構ややこしい時代と言えます。



2.企業の姿勢が問われる時代
――― 「物語」で企業ブランドを構築する。

イントロダクションはこのぐらいにして、インターネットの世界で、勝ち組が何をしているかを、今度はお話ししたいと思います。
レジュメのタイトルにもありますCSR(Corporate Social Responsibility)、企業の社会的責任。平たく言うと、企業がどれだけ社会に貢献しているか、が企業の存続を決めます。皆さんの会社が、社会に対して存在価値があるかどうか、ということがインターネットの世界では特に問われます。

今売れている商品は2種類しかありません。実質価値が高い商品か、物語性がある商品か。実質価値が高いというのは、価格に対して機能が上回っているもの。ユニクロのヒートテックのような商品のことです。物語性というのは、経営者の思いとか、面白いうんちくで、物を買う。「超一品.com」は実質価値です。「石見問屋」は物語性です。超一品は、破格の値段で商品を提供することで、消費者がすぐに買う。石見問屋は、一人ひとりの作り手、職人が丹精込めて作って、その物語を読むことで、消費者が感銘を受けたり共感したりして、買ってくれる。
皆さんの会社がどちらの方向に行くか。簡単に言うとディスカウンターの方向に行くか、高付加価値に行くか。中小企業は、ディスカウントでは勝てません。となると、ストーリーで物を売る、ということを考えなければいけません。



結局、消費者はストーリーに共感しているのです。話題になったものとか、こだわりがあるとか、何となくかもしれませんが、そういうことで物を買っています。ここで、CSRがキーワードになってきます。
奇跡のリンゴ」。木村秋則(きむら・あきのり)さんが、食うや食わずの生活のなかで、農薬も肥料も一切使わずに作ったりんごです。メディアで取り上げられ、本にもなりました。このおじいちゃんが、管理が難しいと言われる果樹栽培の世界で、無農薬・無肥料で作っておられるということで、そのストーリーに消費者はお金を出しているのです。普通の3倍の値段ですが、予約でいっぱいで、普通には買えません。昔からあったそうですが、インターネットの世界では、その伝播がはやい。
(注:2009年の販売はありません。http://sun-act.shop-pro.jp/

社会に、なにかプラスになるものでないと、ストーリーになりません。どれだけ社会に有益なことをしているか、貢献しているか、つまりはCSRの考え方になるわけです。
ストーリーの発信 → 話題になる → ブランドになる。真剣に考えれば、物語は必ずあります。何で会社が存在しているか(意味)、経営者の思い(こころざし)、希少性や尊敬されるようなことがあるか、よく考えてみてください。ブランドを作っていく第一歩になります。
アメリカでは、ビジョナリー経営というのが流行りましたが、やはり、インターネットの世界でも、経営者の思いとかビジョンというものが反映されます。4回目にして、急に泥臭い話になったと思われるかもしれませんが、インターネットは方法であって、それを見ているのは人間です。だから、コンテンツそのもので伝えるべきなのは、皆さんの「思い」です。その思いを、しっかりと絞り込んで、実証していくことが、社会的に有益な方向にもなるし、皆さんのPRにもなるのです。

パターンとしては、窮地に陥った人が、諦めないで、努力して成功した、という話が多いです。「旭山動物園」や「げんべい」など、いくらでも例を挙げることができます。最近は、「社長が、これまで一番苦労されたことは何ですか」とお尋ねすることにしています。苦労されたなかで培ってこられた技術や商品なので、そこにフォーカスして、テーマを決めて、ブランドを作る、というやり方をしています。
先程から言っているように、サイトを事業として捉え、絞り込んでブランドを作っていくときに、その裏側にストーリーがあると、伝播していってクチコミで売れる。これまでやってこられた経営のなかで、一番大事にしていることは何か、ということをストーリーに落としこんでいって、表現していくと、ホームページは生きてきます。それが自社のブランドになっていきます。



3.CSRとサイト戦略
――― 社会に有益なサイトを運営する。

それでは、どのようなホームページが受けているか、ということをCSR的視点で見ていくと、結局「助かる」「便利」なホームページでないと、残りません。皆さんの会社の思いやストーリーに共感してもらうことと、「ためになる」ということは、どちらもCSR的感覚です。皆さんの会社のブランド力を高めていくための、具体的なCSR手法を4つご紹介します。

社会的価値があるということでは、①Q&A型。例えば、夜中に水漏れしたとき、調べたら応急処置ができるとか。困ったときにどうすればいいか、を示してくれるサイトです。単なる商品の売り込みではなく、消費者の質問に丁寧に答えることで信用してもらい、会社にアクセスしてもらえます。
次は、②コンテンツボリューム型。いろいろ探さなくても、そこに行けばすべて手に入るというもの。病院だけの電話番号を集めた電話帳サイトや、ブライダルに関する情報を集めたサイトなど。簡単にはできませんが、消費者は助かります。
③参加エントリー型。人が集まって楽しい、ということも大事です。一番わかりやすい例がレシピサイト。自分の料理のやり方を登録する。他の人がそれを見て作って、おいしかったら点をつけてくれる。これは、消費者が投稿します。CGMです。
最後に、④コミュニティーSNS型。消費者同士が情報を交換する場を提供するものです。

もう一度振り返りますと、ホームページというのは事業である、手をかけなくてはいけない。どう手をかけていくかと言えば、皆さんが将来的に大事にしたいブランドをひとつ作り出して、ストーリーや話題などで肉付けすることで、ブランドが成長する。さらに、ブランドを高めるためにCSR型のホームページを作っていく。
消費者は、そんなに簡単に皆さんの会社を評価してはくれません。ホームページで自社の技術を説明するだけでは、すごいね、とは思ってもらえません。
でも、その周辺にボリュームや機能を持ったサイトがあれば、当然違った角度から人が集まってくるので、接点力も高まるし、ブランド力も上がります。これが、今の究極のネット戦略です。



CSRのサイトをやり始めたら、広告ではなく広報活動をやってください。
広告は、「私は男前です」ということ。広報は、「あの人は男前だ」と、第三者をして語らしめること。広報力の違いが、売上の違いになります。
広報というのは、新聞とかラジオとか、メディアに取り上げてもらえるような働きかけをすることです。毎日、全社員で町の清掃活動をしていたら、のせてもらえます。でも、そのような時間や労力はかけられない。インターネットなら、社内にいながらにして、社会的に価値のある活動、つまりCSR型のサイトを運営できます。
広告の効果はどんどん落ちていますが、広報の価値は逆に増しています。
広報の方法としては、ニュースリリースという形で話題になるような記事を書いて、新聞社やTV局に送る。これを定期的に、習慣化して行っていれば、いつかは取り上げてもらえます。日本は広報後進国と言われ、広報力が弱い。非常に広報ベタですが、これからは広報がすごく重要です。広報をやろうと思えば、話題性のあるCSRの活動が必要ですし、ストーリーも大事です。
広島にある「虎屋本舗」。5年ほど前までは、普通の和菓子屋でした。これからの販促を考えたとき、広報活動に力を入れようということで、方法をいろいろと考えて、「本物そっくりスイーツ」というのをやり始めました。たこ焼きみたいなシュークリームとか、サンドイッチみたいなケーキとか、話題性のあるネタを作って、ずっと雑誌社に送っていたら、何社かが取り上げてくれて、広まりました。今では売上が倍くらいになっています。


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今年も最後ということで、もう一度強調しておきますが、サイトは事業だということを忘れないでください。伸びている世界はここにしかない。他に方法はないはずです。私どもは経営コンサルをしているのであって、インターネットコンサルをしているわけではありません。経営コンサルということで、何が一番伸ばしていける方法か、を考えて、インターネットしかない、ということで、今はインターネットに集中して指導させていただいています。
皆さんが本当に売上を伸ばしたいと思っていらっしゃるのであれば、あの手この手が世の中に出回っています。それと同じことをすればいいのです。二番煎じでも、インターネットの世界では、まだ成功の可能性があります。なぜかと言えば、パイが増えているから。やらない手はありません。成功のパターンがあるので、あとは努力次第です。インターネットの世界も、毎日コツコツできるかどうか。その方向で走り始めない限り、ゴールはありません。

ぜひ、1年間、4回にわたって聞いていただいたので、インターネットを使って売上を上げていただければと思います。



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