第1回 IT活用セミナー報告

菅野印刷興業株式会社 主催

100年に一度のチャンスを勝ち取るためのIT活用セミナー

平成21年4月3日(金) 13:30~16:30
技術専門学院 新川センター



 春らしい晴天に恵まれた4月3日(金)、富山県黒部市の技術専門学院新川センターにおいて、菅野印刷興業株式会社主催「100年に一度のチャンスを勝ち取るためのIT活用セミナー」を開催しました。
 講師としてお招きしたのは、株式会社インターロジック代表取締役、原田光治氏です。
 本セミナーでは、100年に一度といわれる不況のなか、ビジネスにおいてインターネットが大きな影響力を持つようになっていること、企業活動に不可欠な存在となっていることを、多くの実例を引きながら講演いただきました。
 セミナーの内容を簡単ですが以下にまとめましたので、ご参考にしていただければ幸いです。今回残念ながらご参加いただけなかった皆様にも、この内容をご覧いただき、次回セミナーのご参加を是非ともご検討いただきますよう、お願い申し上げます。


はじめに  主催者あいさつ
 100年に一度といわれる不況のなか、従来のビジネスモデルが通用しなくなってきています。当社は印刷業を核としていますが、情報産業の一翼を担っており、数年前からITについての勉強を続けてきました。経営者と社員が一丸となってITを活用し、挑戦し続ける会社のみが、成長していけます。今までと同じではなく、自らの意志で「変革」していくことが必要です。本日お集まりのみなさんと、ともに地元の発展のため勉強していきたいと思います。


1.新しいルール
───変革の時代、インターネット以外に商売を大きくする方法はない

100年に一度のチャンス









 現在、100年に一度の不況といわれていますが、1929年の世界恐慌とは大きく異なります。世界恐慌は経済基盤が脆弱だったために起こったものですが、今の不況はまったく違う様相を呈しています。  世の中を見てみると、すべての企業が業績を悪化させているわけではなく、伸びている企業とそうでない企業が明確に分かれてきています。ユニクロやマクドナルドは好調です。不況なのではなく、ルールが変わってきていると捉えるべきなのです。
 100年前とルールが変わった、つまり「インターネットがビジネスに大きな影響を与えるようになった」ということです。新聞購読率の低下やテレビ離れのような生活スタイルの変化があり、折込チラシやテレビコマーシャルが従来の力を持たなくなってきています。去年と同じことをしていても、売れなくなるのは目に見えています。じっと景気が上向くのを待っていれば良いということは絶対にありません。
 例えば車や住宅のような高額な商品を買おうとしたとき、必ず買う前に研究・検討というプロセスがあります。従来であれば専門の雑誌を見たり、チラシを比較したり、という方法でしたが、いまはすぐにインターネットで情報を入手できます。しかも、売り手側の情報よりも、実際に買った人や使った人の意見が影響力を持つようになっています。
 今後ますますコミュニケーションの手段はインターネットや携帯電話が主流となっていくでしょう。今から、真剣にインターネットに取り組んでいかなければ、モノを売ることは難しくなっていきます。

インターネット世界の進化
WEB1.0、WEB2.0という言い方をご存じでしょうか。インターネットの世界はPeer to Peer(ピア・トゥ・ピア:メールに代表されるような、1対1の個人同士の通信方式を指す)の時代が長くありましたが、3年ほど前からCGMの時代に変わってきています。前者がWEB1.0であり、進化したものがWEB2.0です。CGMとは、コンシューマー・ジェネレイテッド・メディアの略称であり、大きく分けて3つの種類があります。
 これまでは、売り手側から買い手側への一方的な情報発信でした。それがCGMの時代になると、消費者(個人)が情報を発信するようになり、売り手のコントロールが利きません。どれだけ企業が声高に宣伝しても、消費者の評価が低ければ、見向きもされないという時代になっています。
 先ほどから新しいルール、新しい枠組みというお話をしていますが、100年続いた経済原理がくずれ、変化しているのです。このようなとき、企業はインターネットをうまく活用していかなければ生き残っていけません。
 ひとつの例として、価格.com(http://kakaku.com/)というサイトをご紹介します。このサイトは、商品の価格を比較できるサイトですが、実際買った人のコメントも載っていて、検討するときの参考に見られています。ひと昔前なら、欲しいものがあればチラシや雑誌で情報を集めたものですが、今は、即、インターネットで検索です。CGMがよく見られるものとしては、パソコンなどのデジタル機器のように、実際の操作性が使ってみないと分からないもの。もうひとつは旅行、行ってみないと分からないことが結構あります。
 インターネットにはこういうものに対しての正直な感想が書かれているので、ごまかしがききません。「悪意の書き込みがあったらどうするの」という質問を受けることがありますが、そのような書き込みに対しては必ず反対意見が書かれます。インターネットの世界は人の善意によって成り立っている「スーパー民主主義」の世界だと申し上げています。
 また、WEB2.0の時代になると、知識や技術を持っているだけでは価値を生まなくなってきます。インターネット上にはさまざまな情報がオープンになっていて、自分で勉強しようと思えばいくらでも情報を得ることができます。独自の技術を持っていようと、地域でナンバーワンのシェアがあろうと、情報が開示されたらその優位性はなくなります。これからはポストプロ化が進み、情報をいかにうまく使っていくかが重要になってきます。
 どのような業種でも、インターネットを活用しない手はありません。小売店でも、建設業でも、同じです。今伸びている会社というのは、インターネットを使ってあらゆる方法で消費者へのアプローチを行っています。
経営者のなかには、これだけお話ししてもまだ、インターネットなんて、と思っておられる方もおられるかもしれませんが、逆に「インターネットに載せない理由があるか?」というのを考えていただきたいと思います。百貨店の売上は落ち込んでいますが、同じ商品がインターネットで売れています。日用品も、普段買っている人たちが、雨が降ったから、などの理由でインターネットで購入しています。
 100年に一度のルールが変わる時代、インターネット以外に商売を大きくする方法はありません。

2.ネット戦略
───ダイレクトに情報発信しなければ、せっかくのホームページが無駄になる。
 インターネットの検索エンジンが発展途上だったとき、検索ワードを打ち込んでも、なかなか欲しい情報が載っているサイトにたどり着けなかった経験はありませんか。そういう時代には、やっと見つけたサイトをブックマークし、そのサイトのなかを細かく見ていくことが多かったのですが、現在、検索エンジンが進化してくると、いちいちブックマークしなくても、検索すれば関連サイトがすぐに出てきます。
 仮に検索で引っかかって、せっかくホームページに来てくれたとしても、トップページに欲しい情報がなかったら、それ以上見られることはありません。これを「直帰」といいますが、これまでのようにホームページの構造を複雑にしてひとつのサイトに情報を詰め込むことは、得策ではないということがお分かりいただけると思います。
 消費者はダイレクトに情報を求めています。検索ワードに合ったサイトでなければ見られません。そして、次に見たときに更新されていなかったらもう見に来てくれません。
 どうすればいいか、その答えが「ゲートウェイ戦略」です。LPO(ランディング・ページ・オプティマイゼーション)ともいいます。目的別に、キーワードごとに最適化したサイトにまずは来てもらって、それぞれのホームページからリンクを貼って、本サイトへ誘導するという戦略です。ゲートウェイ(門)となるサイトはコンテンツを作りこんでいくことによって、興味のある人たちが集まるようなサイトに育てていきます。毎日見てもらい、ファンになってもらうことで、最終的に資料請求や受注につながっていきます。このためには、業者に依頼せず、自社で更新できるCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)が不可欠です。
 単なる商品名や社名ではなく、独自のカテゴリーを作って、検索のキーワードから誘導できるようにします。例として、朝時間.jp(http://www.asajikan.jp/)を紹介します。このサイトは、朝の時間を豊かに過ごすというコンセプトでつくられていて、「朝」と検索しても上位に出てくるすごいサイトです。ふつう、このような単語で検索の上位になるというのは考えられないことです。
 また、インターネットの特性として「計測できる」ということがあります。チラシを折り込んでも、どれだけの人がそれを見たか、それによって商品を買ってくれたかということを調べるとなると、大変なコストがかかります。しかし、インターネットでは解析ソフトが無料で使えるので、例えばアナリティクスというソフトを使えば、どのようなキーワードで検索され、どのページが見られているか、ブックマークされたか、ということも全部分かります。
 これは科学です。この科学を知っている企業が業績を伸ばしているのです。アナリティクスの結果を細かく分析していって、それに基づいて絶えずサイトを改良していきます。
 さらに、立ち上げたばかりのサイトはなかなか検索の上位にはなりません。そこでPPC(Pay per Click)広告を打ちます。検索したとき別枠で「スポンサーサイト」「スポンサーリンク」として表示される広告のことです。
 PPC広告をやりながら、サイトの分析を続け、どんどんいいものに変えていきます。ホームページをちゃんとつくれば、共感してくれる人が必ず出てきます。そうすると、これまで価格だけでみていたお客さんから、本当の商品の良さを見てくれるお客さんへと客層が変化していきます。共感してくれているので、結果的に買ってくれる率も高い、ということになります。




3.クラウドコンピューティング
───無料のサービスをどんどん使う。
 Googleは、クラウドコンピューティングの原理によって世界を席巻しました。クラウドとは雲のことですが、世界中に広がっているインターネット世界のネットワークを「雲」と表現しています。実際ここにあるパソコンにソフトが入っていなくても、ブラウザ(閲覧ソフト)さえあれば、インターネット上のどこかにあるソフトを利用して作業できるという環境が整いつつあります。
 なかでもGoogleが提供しているAPPSというサービスを使えば、メールはもちろん、スケジュール管理や文書管理なども簡単に一元化できます。しかも、これらは無料。データはすべてGoogleのサーバーにあり、インターネットにつなげられる環境があれば、いつでもどこでも見ることができます。日報や勤怠管理もAPPSで「見える化」できます。
 APPSを導入することで、大幅なコストダウンを図れる可能性があります。このAPPSを知っているかい  ないかで、この先大きな差がでてきます。
 (この後、参加企業の方に「コストダウン簡易診断」を記入いただきました。)
 車がなくて、電話がなくて、事業活動ができるでしょうか。インターネットも絶対に必要な時代になっています。早く始めた者が勝ちます。これからはインターネットを使える人と使えない人、知っている人と知らない人の差が歴然と開いていきます。どうか、インターネットの操作に慣れ、使いこなしていってください。


【座談会】
質問:検索で、上位になるにはどうすればいいか。

 順位を上げるためには、簡単に言うと3つの方法が考えられると思います。
 1つ目は、一般的に言われる「SEO対策」。2つ目は「キーワードチェンジ」。3つ目はチラシなどを使う「クロスメディア」です。
 SEOは、サーチ・エンジン・オプティマイゼーションのことですが、さらに踏み込んで言うなら、SEM(サーチ・エンジン・マーケティング)が重要です。
 ビッグワード(よく検索される言葉)で自社サイトを検索上位に上げようというのは至難の業です。しかも、自分が検索してほしいと思っている単語の組み合わせが、一般の人にとって関連が薄かったりすると、いくらSEO対策をしても検索されません。
 そのような場合に、もっと検索されやすい別のキーワードを立てて、そこから誘導する形に変えます。これがキーワードチェンジです。
 このキーワードを考えるとき役に立つのがGoogleの「アドワーズ キーワードツール」です。これを参考に、ちがう観点からホームページへ引っ張ることを考えます。
 あとは広告です。先ほどのPPC広告もありますが、インターネット上に広告を打つより、新聞広告など、印刷物での広告のほうが効果的でコストもかからない場合があります。
 (この後、参加企業のホームページについて、個別の分析が行われました。)

SEOのさらに詳しい話は、開発担当の深川からご説明します。
深川氏:検索エンジンで上位に来るための条件として、よく言われるのが「サイト年齢」と「リンクポピュラリティー」です。この2つで8割決まります。あとの2割はコンテンツ(内容、キーワード)やページのボリュームなどです。
できたばかりのサイトより、何年も運営されているサイトのほうがエライ、という考え方から、サイト年齢が上のサイトが上位に来るようになっています。サイト年齢はお金で買えません。SEO対策にはいろいろな方法がありますが、テクニカルに順位を上げられてしまうと検索エンジンの信用にも関わりますし、お金を持っている(大がかりなSEO対策ができる)ところばかりが上位に来るということにもなりかねません。そういう理由もあって、年齢が重視されています。
 リンクポピュラリティーとは、リンクをどれだけもらっているかということで、簡単に言えば人気度です。そのリンクも、数さえあればいいのではなく、より関連のあるサイトからのリンクのほうが価値があります。
 少し前までは、できたばかりのサイトはなかなか上位にならなかったのですが、最近ではできて3か月のあいだは検索の1ページ目に載るようになっています。その間に良質のサイトならリンクを貼ってもらえ、3か月以降も上位に居つづけることができます。リンクが取れなかったらあっという間に1000位以下まで落ちます。これを元に戻そうとすれば最低1年はかかります。
できてから1年間は検索順位で一喜一憂できないと思います。徐々にサイトの性格が決まってきて、1年ぐらいでだいたいの定位置が見えてきます。
グーグルもヤフーも、いいサイトを上位で表示しなければユーザーに飽きられてしまいますし、詐欺まがいのサイトが上位になることが多かったりすると、誰も検索エンジンを使わなくなってしまいます。ちゃんとしたサイトが上に来るように、絶えず改良されているのです。



原田氏:他にご質問がないようなので、補足してお話しします。

 いま、インターネットの世界では、製造業が注目を集めています。製造業こそインターネットで商売をするべきという風潮が高まっています。そうはいっても、固定客ばかりと取引しているので営業らしい営業がいない、という会社もあると思います。新しいお客様を見つけるために、インターネットを営業マンにするのです。
代表的なサイトとして、必殺めっき職人(http://sos.sanwa-p.co.jp/)をみなさんにご紹介します。内容を見ると、めっきのことを知りたかったらこのサイトに来るだろうな、と思わせるほどに作りこまれています。内容が充実しているので全国から問い合わせがあり、テレビで取り上げられたりという波及効果もあってすごく話題になっています。
 インターネットは広告ではなく広報です。いわゆるパブリック・リレーションズ(PR)という観点からサイトを構築していけば、発展の糸口に十分なりえると思います。
 この「めっき職人」の内容は、普段やっていること、自社技術を整理して載せているだけです。オープンにしたら真似される、という方もおられるでしょうが、真似されるほどの技術なら自分たちが公開しなくても、いつか誰かが情報を流すでしょう。それなら自分から発信したほうがいいです。そして、見る人が楽しめることも大事です。
 インターネットなら、これまでできなかったことに挑戦できます。海外への輸出も不可能ではありません。現地法人や工場をつくったりしなくても、まずはインターネット上にショップを立ち上げ、ターゲットを絞って海外向けの広告を打ち、アクセスを分析しながら徐々に修正していけばいいのです。
 最後に、インターネットには価値ある素晴らしいコンテンツがたくさんあります。You Tubeの海外の動画に誰かが日本語の字幕をつけてくれるように、いいものを提供しようという善意のユーザーによってインターネットの世界は今後さらに成長していくと思います。正しい情報を正しく伝えることが評価されます。正しくビジネスをやっていこうという会社にとっては、インターネットは強力な武器になるので、今日の話を聞いて、うちの会社もインターネット戦略に本気で取り組もうと思われたら、すぐに始めてください。

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